〈STORY〉
『源氏物語』の登場人物、六条御息所。光源氏の歳上の恋人で優雅な貴婦人ですが、気位が高く、光源氏の正妻への嫉妬でついに生霊となってしまいます。彼女を主人公にした謡曲『葵上(あおいのうえ)』と『野宮(ののみや)』の2作品からそれぞれ生まれ出た、二人の六条御息所と一緒に、京都の嵐山をめぐる旅を描く物語。

〈脚本家による解説〉
「六条御息所のように生霊になってやる!」

初めて付き合った恋人にふられた際、 鴨川で捨て台詞を吐いた記憶(失恋した自分に酔っていた当時の痛い私…)。こんな捨て台詞がでるくらい、「六条御息所=生霊」重い女の代表格というイメージがありました。しかし六条御息所の気持ちがわかる部分もあり、どこか報われてほしいと初めて源氏物語を読んだ時に感じたのを覚えています。

時を経てこの木ノ下歌舞伎プロジェクトの講座で脚本を書く機会をいただき、六条御息所を通して、先にあげた私の過去の経験を昇華させたいと思いました。

作品作りをする際、能の『葵上』『野宮』を参考にしました。

葵上に登場する、源氏を恨む六条御息所。
野宮に登場する、源氏を慈しむ六条御息所。

相容れない二人だけれど、二人にとっては源氏は大切な思い人である。二人が対話することによって火宅の門をくぐり、成仏することができたらいいなと思いを込めました。

六条御息所や源氏に対して固定されたイメージがありましたが、参考文献を読んでいくと、六条御息所は教養が深く聡明な女性、源氏はそんな六条へ敬意もあり愛情があったことがわかり、そんな要素も作品を通して伝わればいいなと思っています。

また作品には匂いを取り入れました。私にとって「匂い」は、その人の匂いをかぐと落ち着いたりその当時の記憶を思い出して懐かしむなど、とても大事な要素でした。実際、源氏物語にもたくさんのお香の名前が出てきており、六条御息所も源氏の匂いには格別な思いがあったのでは…

まだまだ直す部分がある脚本ではありますが、六条御息所がどうか幸せでありますようにと切に願います。


〈脚本〉
森寺みなみ